寝るときの姿勢の考え方|身体に負担をかけず効果的な睡眠をしよう

  • 身体にメリットが多い睡眠姿勢ってありますか?また良い姿勢悪い姿勢はありますか?
  • 朝起きるときにいつも辛いです。いっぱい寝ても凄くだるくて起きるのがキツく、ひょっとしたら姿勢のせい?
  • 寝るの体勢が日によって違う。うつぶせ、仰向け、横向きなどありますが、それぞれの効果や最善の体勢を知りたいから教えて!

毎日の睡眠で体力を回復しようと思っても朝まで疲れが残っているなんて経験ありますよね。1日1日は少しづつでも慢性的に睡眠不足が続くと「睡眠負債」が溜まり心身に悪い影響が出てしまいます。

私は基幹病院で理学療法士として働くだけでなく、トレーナーとして水泳の国体選手のケアも行っています。

身体の調子を整えるにも、良いパフォーマンスを出すにも、効率的な睡眠はとっても重要。できるだけ効率よく体を回復させるには、睡眠の姿勢も考えてみるといいですよ。

そこでこの記事では「寝る時の姿勢の考え方」としてポイントとなる背骨のポジションからそれぞれの入眠姿勢のメリットとデメリットをまとめて解説します。

この記事を読むことで身体に負担をかけない睡眠姿勢がわかります。睡眠中は意識がないので眠りにつく前に理想な背骨のポジションを整えることが大切。

この記事を読めば、姿勢から睡眠の質をあげることができます。

睡眠時の姿勢に気を配っていますか?

私達人間は一日の1/3にも及ぶ時間を寝て過ごしています。

1日何時間寝ているのかにもよりますが、睡眠時間は6時間~8時間である場合がほとんどです。寝ている時間はとても長いがゆえに、私たちの身体にも様々な影響を及ぼします。

睡眠の一番の目的は、身体や頭の疲労物質を取り去ることです。しっかりと休息をとることにより、明日の活動エネルギーを貯めることができます。しかし、良い影響はもちろんですが中には悪い影響が出てしまっている方も一定数存在します。

 
睡眠中の姿勢の特徴は、「自分で意識して動けないこと」です。

正確には「動かない」ですが、寝ている間は意識的に動くことはないので、動けないといっても間違いではありません。実は、この「動けない」という状況が身体への悪影響となっていることがあります。

そこで、悪影響を防止するために私たちにできることは、睡眠環境を整えることと入眠姿勢の調整です。

今回は、睡眠時の姿勢に関して紹介していきます。自分が寝ている時、どのような状態になっているのか、一点ずつ確認しながら調整していきましょう。

姿勢によっては体全体に影響が及んでいることもあります。各姿勢が、身体にどのような「良い影響・悪い影響」を与えているのかをしっかりと把握し、各姿勢を使い分けられるようにしましょう。

寝る姿勢のポイント①背骨のポジション

まずは、背骨のポジションについて紹介していきます。

背骨は自然なカーブを描いており、このカーブによって、頭の重さなどを分散したり支えたりしています。立っている時や座っている時には、このカーブが正常に保たれている場合がほとんどですが、寝ている時はどうでしょうか。ベッドやマットレスなどの影響でカーブが崩れていませんか?

寝ている時間は非常に長いので、正常なカーブが保たれていない状態が続いてしまうと、その悪いクセ残ってしまうこともあります。

悪い背骨のカーブが付いてしまうと、日中に活動している時にも肩や腰・膝などに悪影響が生じます。睡眠時には意識的に背骨のカーブを調整することができないので、睡眠環境を整えることによって、背骨の状態を正常に整えておくことが重要になります。

 
特に関係しているのは、マットレスなどの寝具の硬さや、枕の高さです。

寝具が硬いと背骨の曲がっている部分にだけ力が加わってしまいますし、枕が高すぎると首から背中にかけての背骨のポジションが崩れてしまいます。

寝る姿勢のポイント②身体にかかる圧力

睡眠中には、身体と寝具が接触しているので、身体側には圧力がかかることになります。

身体にかかる圧力は、どのくらい寝具を押しているのかで決まり、特に重い「骨盤」や「肩」などの部分で圧力が高まります。身体にかかる圧力は、普段の生活ではかかることの無い力なので、なるべく弱い方が良いとされており、身体にかかる圧力を分散させる必要があります。

一点に集中してしまうと、身体のゆがみなどが生じ、姿勢に影響が出てしまうこともあります。身体のゆがみなどで姿勢に影響が出てしまうと、前述のように日中に活動している時にも肩や腰・膝などに悪影響が生じることがあります。

仰向けで寝る入眠姿勢(約60%)

まずは「仰向け」の姿勢です。この姿勢で睡眠をとっている人が多く、人数は全体の約60%にも上ります。他の姿勢よりも、寝具との設置面積が広いので、体重を分散しやすくなるなどのメリットがありますが、デメリットも存在しているので把握しておく必要があります。

背骨が自然と理想のポジションに

仰向けで睡眠をとることのメリットは、「背骨を理想のポジションに保ちやすい」ことです。

背骨のカーブが崩れると身体の他の部分にも影響が出てしまいます。仰向けは他の姿勢よりも背骨のカーブを保ちやすくなっています。背骨は前後にカーブが付いているので、横向きに寝た時などと比較すると力のかかり方が自然なため、ポジションを保ちやすくなるのです。

また、人間の筋肉はほぼ左右対称についているので、仰向けであれば左右対称的な力が加わり、全体的なバランスも保ちやすいといえます。

いびきをかきやすくなるのがデメリット

仰向けで寝ることのデメリットは「いびきをかきやすくなること」です。人間は呼吸をする際に鼻や口から空気を取り込み、のどを通して肺へ送っています。普通の生活でいびきをかく人はいませんが、寝ている時にいびきをかく人は一定数います。

いびきをかく原因は、空気の通り道である喉が狭まっていることです。日常生活でも、隙間風などで「ヒュー」と音がする現象を見たことがある方も多いはずです。これと似た現象が喉で起こることにより、「ゴー」という音が発生しています。

私たちが普段生活している時には、喉周辺の筋肉などは重力の影響によって正常な位置に保たれています。しかし仰向けになると、口の中にある舌や周辺の肉が重力の影響によって喉の方に落ちてきてしまうことがあります。

若いうちはいわゆる「ハリ」があるので、そこまで落ちていくことは無いのですが、加齢とともにこの現象が起こりやすくなります。うつ伏せや横向きでは喉の方へ落ちていくことはありませんが、仰向けの場合にはいびきをかきやすい状態となっています。

うつむせで寝る入眠姿勢(約5%)

次はうつむせです。仰向けに対して、うつむせで睡眠をとる方は非常に少なくなっており、約5%といわれています。単純に息がしづらいという理由でうつむせをしない方もいますが、この姿勢にもメリット・デメリットが存在しています。

子供はうつむせで寝ていることが多くありますが、これに関しても後々成長と関係するような変形をきたしてしまうデメリットもあるので注意が必要です。

1番気道が開きやすい

うつむせのメリットは、「気道が開きやすいこと」です。言い換えると「息がしやすい」ということです。

仰向けでは、空気の通り道である喉が狭まります。一方で、うつむせでは舌は重力に引かれて気道と反対側にきます。結果的に喉が広がり、空気が通りやすくなります。枕などで口や鼻を塞がない限り、他の睡眠方法よりも呼吸がしやすい姿勢がうつむせなのです。

気になる方は実際に試してみると良いでしょう。睡眠しておらず、起きている状態でも実感することができるので、うつむせを毛嫌いしていた方でも、「意外と寝やすいかも」と感じることができるかもしれません。

顔の片方に圧がかかる

うつむせのデメリットは、「顔の片方に圧力がかかること」です。「片方」という部分が特に重要となっています。

うつむせで寝る際、鼻と口をふさぐわけにはいかないので、一般的には頭のみ左右どちらかを向いた状態となります。つまり、顔のどちらかにだけ圧力がかかってしまうのです。

背骨のカーブの部分でもお伝えした通り、長時間圧力を受けていると変形とまではいかなくても、悪い癖が付いてしまうことがあります。最初の数週間であれば問題ないこともありますが、これが数か月・数年と続くようになると、徐々に歯並びや顔の輪郭などに影響が出てくる可能性もあります。

顎のみが右側からずっと押されていた場合、どのように変形してくるかは手で押してみると想像できるはずです。

人間の頭の重さは、体重の約10%と言われており、体重が60kgの人であれば6kgに相当します。2Lペットボトル3本分もの重さが耳や頬に加わることを考えると、顔にゆがみが生じてしまうのも納得ですね。

具体的には歯並びや顔の輪郭がゆがみやすくなっています。輪郭や歯並びは第一印象にも大きく影響し、修正・矯正には多額の費用が掛かります。左右対称の理想的な状態を保っておけるように、工夫が必要になります。

横向きの寝る入眠姿勢(左下10%、右下25%)

最後は横向きです。横向きでなる人は、左下が10%・右下が25%ほどを占めます。利き手などの影響もあり、右下で睡眠をとる方が多くなっています。横向きで寝ることには腰痛緩和などのメリットがある一方で、仰向け・うつむせとは異なる、「左右方向のゆがみ」が生じる可能性があります。横向きに関してもメリット・デメリットをしっかりと把握しておきましょう。

腰に負担がかかりにくい

横向きで睡眠をとることのメリットは、「腰に負担がかかりにくいこと」です。

仰向けなどと比較しても腰が丸まりにくく、負担がかかりづらくなっているのが横向きです。病院の医師なども、腰痛がある際には横向きで寝るなどの指導をすることが多々あります。腰痛に悩んでいる方で、普段は横向き以外で寝ているという方は、一度試してみると良いでしょう。

ただし、横向きで寝ることで腰痛自体が治るという効果はあまり期待できません。
この部分に関して、勘違いをしていると、「横向きで寝ているのに腰痛が治らない…」と不安になってしまう方もいるようです。あくまで「腰痛を緩和・予防するための手段である」ということを念頭においたうえで横向きで寝るようにしてみましょう。腰痛の改善には別途対策が必要になります。

身体の左右の歪みを作りやすい

横向きで睡眠をとることのデメリットは、「左右の身体のゆがみが出やすいこと」です。左右のゆがみに関しては、仰向け・うつむせと比較しても非常に出やすくなっています。うつむせでは顔だけでしたが、横向きでは顔を含めた体全体に左右のゆがみが生じる可能性が高くなっています。

具体的には、下側の肩が前に出てしまったり肋骨の動きが悪くなってしまったりすることがあります。

下側になった肩は、どうしても巻き肩のように前側へ押し出された姿勢で固定されてしまいます。これが長時間続くと、この悪いクセがついてしまい所阪神のゆがみにつながります。

また、肋骨は呼吸の際などにも動いているので、肋骨の動きが悪くなると運動時の呼吸などにも影響が出てしまうことがあります。

結局は自分の好み|でも定期的に睡眠姿勢の変更を

最終的に「どの姿勢が一番身体に良いのか」ですが、これは「自分の好みによる」という部分が大きくなります。しかし、どの姿勢にもメリットとデメリットが存在していることは理解できたと思います。

睡眠の一番の目的は「身体や頭の疲労物質を取り去る事」です。

メリットやデメリットに左右されて無理な姿勢を取って睡眠し、寝付きが悪かったり睡眠の質が保たれていなかったりする場合には本末転倒となります。

そのため、「定期的に睡眠時の姿勢を変更する」という方法が効果的です。最も大切なのは、「姿勢ごとのメリット・デメリットを理解しているのか」ということです。特にデメリットを理解していれば、「毎日この姿勢を続けたい」と感じることは少なくなるはずです。

理想的には、「仰向け」が一番身体への負担が少なくオススメできる方法ですが、自分の身体や目覚め・睡眠の質などにも左右される部分があるので、皆さん自身で研究しながら良質な睡眠と適切な姿勢が保てるように心がけましょう。

寝返りの役割

私たちが睡眠をとっている間には、「寝返り」を行います。

自分たちが「動こう!」と思って自分の意思で動かしているわけではないので、意識的に操作することはできません。

寝返りを行う理由としては、

  • 圧力の分散
  • 還流血流(体の中を流れている血の流れ)の確保
  • こもった熱の放散

など、どのような姿勢で寝ていても、必ず行う動作です。

睡眠中に身体への負担を避けることが目的で行われるのが寝返りですが、自分の意思で行うことができない以上、「どうせ寝返りを行うから大丈夫…」という理由で適当な姿勢を取ってしまうのは良くありません。過信せずに、寝具や姿勢などの睡眠環境を整えるように心がけましょう。

とくに、うつむせで寝ている場合には、寝返りが起こることが少なく、朝までうつむせのままである場合がほとんどです。左右の変換が行われるのは顔のみである場合が多く、左右を変えても必ずどちらかに偏って圧力が加わってしまいます。

成人してからであれば、ある程度の圧力でも問題ありませんが、成長期の子供の場合、「歯並び」に影響することが多々あります。寝返りの頻度が少ないと感じる場合には、親が代わりに行ってあげるなどの対策も有効です。

まとめ

ここまで「寝る時の姿勢の考え方」としてポイントとなる背骨のポジションからそれぞれの入眠姿勢のメリットとデメリットをまとめて解説しました。

睡眠の質をあげるには睡眠姿勢のメリットとデメリットを考えて、眠りにつく前に理想的な背骨のポジションを整えることが大切です。

  • 寝る時の姿勢のポイントは、①背骨のポジションの理解、②身体にかかる圧力の分散
  • 仰向け・うつむせ・横向きそれぞれのメリットとデメリットを知って調整しよう
  • 定期的に睡眠姿勢を見直すことが大切

睡眠中は意識がなく、自分で姿勢を調整することができないため、眠る前に調整することと、寝返りしやすい睡眠環境を整えることが大切です。

今回の記事を参考に自分の睡眠姿勢を見直し、効率的な睡眠を確保して見ませんか?